スイスで子育てをしていると、日本の教育常識とのギャップに驚かされることが多々あります。現在、我が家の息子は公立中学の1年生(7年生)。日本では部活動や勉強に追われつつも、まだ「将来の仕事」なんて先の話……という時期ですよね。
しかし、スイスでは違います。息子はこの12歳という若さで、すでに「人生の大きな分岐点」に立ち、将来のキャリアを真剣に考え始めています。
スイスの教育事情:中学2年で「職場」を探し始める理由

スイスの義務教育期間が終わる15歳前後、子供たちは大きく2つの道に分かれます。大学進学を目指す「ギムナジウム」か、職人や専門職を目指す「Lehre(レーレ:職業訓練)」かです。
驚くべきは、その準備の早さ。スイスの中学生のスケジュールは、日本の感覚からすると非常にシビアです。
- 中学1年: 自分の適性を知り、世の中にどんな職業があるかを調べる。
- 中学2年(ここが本番!): 気になる企業へ連絡し、「Schnupperlehre(シュヌッパーレーレ)」と呼ばれる「お試し就業」に行く。
- 中学3年: 企業と契約を結ぶ。
つまり、中学2年生のうちに、自分で企業にアプローチして「就職活動」のような動きを始める必要があるのです。
「Lehre(レーレ)」という超実践的なシステム

スイスの若者の約3分の2が選択すると言われるこのシステム。単なる専門学校ではなく、「週の3〜4日は企業で本物の社員として働き、残りの1〜2日を学校で専門知識の習得に充てる」というデュアル教育です。
実際に私が働いている職場にも、16歳の女の子がLehreとして入社してきました。ホテルでのお仕事は、数ヶ月ごとに、キッチン・レストラン・レセプション・ハウスキーピングと回っていき、1年間働くようです。
どの会社でLehreするかによって、学費が免除されたり、学校で使用する教科書を買う費用がお給料に含まれていたり、契約内容もいろいろとあるそうです。
早くて、15歳で「社会人(見習い)」としてスタートを切るため、なんと中学生のうちに給料をもらう契約を交わすことになります。履歴書を書き、面接を受け、自分の力で「働く場所」を勝ち取る。この自立の早さは、日本の教育にはないスイスの大きな特徴です。
日本の教育との決定的な違い
日本とスイスの教育を比較すると、その哲学の違いが浮き彫りになります。
| 比較項目 | 日本の一般的な進路 | スイスの Lehre |
| 進路決定時期 | 18歳前後(大学入学時) | 12歳〜15歳 |
| 教育の形 | 全員が共通の一般教養を学ぶ | 早期に専門特化した教育を受ける |
| 社会との距離 | 学生の間は「守られる存在」 | 若いうちから**「社会の担い手」** |
| 評価基準 | 学歴や偏差値が重視されがち | 実務スキルと資格が重視される |
スイスでは「大学に行かない=勉強ができない」ではなく、「早くからプロの技術を身につけるエリート」というポジティブな捉え方が主流です。
親としての葛藤と、これからの期待

正直なところ、親としては「まだ12歳なのに、一生の仕事を決めさせていいの?」という不安もあります。しかし、スイスのシステムには「透過性(Permeability)」があり、働きながら後から大学入学資格を取ることも可能です。
むしろ、早いうちに社会を体験することで、「何のために数学を学ぶのか」「なぜ語学が必要なのか」という目的意識が子どもたちに芽生えるのかなと思います。
これから始まる中学2年生での「職場探し」。息子がどんな仕事に興味を持ち、どんな大人たちの背中を見て成長していくのか。ハラハラしながらも、スイス流の「たくましい自立」を全力でサポートしていこうと思います。
